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「子どもの記憶に残る七五三に」ムラタトモコさん デザインの新作着物に込めた思いとは

一生に一度の七五三。だからこそ、一人一人の子どもに合わせた特別な時間になるように。

大きくなってからも、「あの日は楽しかった」と子どもにとって大切な思い出になるように。

クッポグラフィーの七五三は、子どもが主役になれることを何よりも大切にして撮影をしています。

着物もその一つ。子どもが選んでいて楽しくなるような、そして子どもの魅力が引き立つようなデザインになるように、生地選びから縫製まで全てスタッフがオリジナルで作っています。

今回ご紹介する新作着物は、2年ぶりとなるデザイナーとのコラボレーション企画です。テキスタイルデザイナーのムラタトモコさんと、クッポグラフィーで着物の制作を担当している星恵に制作秘話を伺いました。

■自然体の魅力を引き出せるように お互いが目指した“共通する思い”

ーー今回、着物のデザインの依頼が来ていかがでしたか?

ムラタさん:今まで生地のデザインのお仕事は何度かあったのですが、着物用の生地は初めてだったので、お話をいただいたときはびっくりして。しかもお子さまが着られたときに、柄がどのように見えるのかを考えたり、独特の難しさがありました。貴重な機会で、自分にとって大きな挑戦でした。

星:今回は本当にありがとうございました。見た瞬間、ああ!すごくかわいい!と、関係者の声が揃いました。色合いも想像以上に可愛くて。

ムラタさん:すごく嬉しいです。着てもらうのが楽しみですね。

ーームラタさんにお願いしたのはどうしてだったのですか?

星:ムラタさんの活動テーマ「心にそっと、小さな幸せを」というのが、クッポグラフィーが大切にしていることに近いと思ったのがきっかけでした。クッポグラフィーも、その人らしさやその人の人生に寄り添えるような写真を撮ることを大切にしているので。暮らしの中で心に留まった風景を図案に落とし込んでデザイン画を書かれているというムラタさんのスタイルも、自然体の魅力を写真に残している私たちと、目指す方向性が似ているなと思いました。

ムラタさん:クッポグラフィーさんのホームページなどを拝見させていただいたときに、写真の雰囲気や皆さんが大切にしていることが、自分が大切にしていることとぴったり重なり合う感じがして。企業とのコラボレーションはこれまでにもありましたが、活動のコンセプトが似ていることは珍しいです。

ーーフォトスタジオでオリジナル着物を作っていることも珍しいですね。

星:これまで、既製品の伝統的な柄の着物を取り扱った時期もあったのですが、なかなかスタジオの雰囲気にぴったりと合うものが見つからなくて。やわらかい雰囲気の中での撮影なので、はっきりとした色や柄が多い従来の着物だと、子どもよりも着物の方が目立ってしまったりもして。あくまでも、写真にしたときに子どもが引き立つようにしたいので、そうした着物を探す中で、自分たちで作ってしまおうか!となりました。最初は勢いもありましたね(笑)

星:ムラタさんのデザインは、子どものやわらかな表情にそっと寄り添うような。デザイン自体が主張しすぎず、その子のありのままの魅力を引き出してくれるような色彩で。私たちが求めていたもの以上の素敵な着物が出来上がってとても嬉しいです。

■晴れの日も 雨の日も 曇りの日も 子どもの未来に願いを込めて

ーー着物では珍しい模様ですね。手書きのような質感で。

星さん:着物ではあまり見ない柄ですよね。しかも、大柄のプリントというのも珍しくて。

ーー柄は2種類。それぞれどのようなテーマで描かれたのですか?

ムラタさん:まずこちらの「happy life」は、天気をモチーフにしました。

(写真)「happy life」晴れの日の明るい光、曇りの日の雲の様子、雨粒、様々な天気が1枚に描かれている

星:天気をモチーフにしているというのも斬新ですよね。

ーー天気を選んだのはどうしてだったのですか?

ムラタさん:子どもの大切な節目の日に着るものなので、これからの人生で、切っても切り離せないものをテーマにしようと原画作りを始めました。その中で、天気は人生観と毎日の暮らしが結びついているように思っていて。人生の中で、嬉しいことがあったときには心が晴れやかな気持ちになったり、落ち込むようなことがあったときには泣きたい気持ちになったり。どんな人でも日々感情は変わると思うんですよね。

それが、どこか天気の移り変わりにも似ているような気がしていて。快晴のときは、心まで明るくなるようなこともありますよね。雨雲が立ち込めるような天気と、悶々と悩むような気持ちも似通っているようにも感じていて。

星:心と天気、通じ合うものがありますね。

ムラタさん:これからの人生、心の中がどんなお天気模様であっても、前を向いて成長していってほしいという思いを込めました。

ーーテーマを伺って改めて着物を見ると、子どもたちのこれからが楽しみになるような気持ちにもなりますね。もう一つ、「shape of hope」はどのような思いを込めて描かれたのでしょうか?

ムラタさん:こちらはもう少し抽象的なデザインにして、「希望の形」をモチーフに描きました。

(写真)「shape of hope」希望の形が抽象的に描かれている

ムラタさん:子ども一人一人の中には、たくさんの希望があって。これからの人生で思い悩むようなことがあったとしても、結果的には良くなっていくように。毎日をポジティブな気持ちで過ごしていけるように。これからの未来を生きていく中で、きっといつかは良かったと思えるように。そんな希望や願いを形にしてみました。

ーー丸や四角、色んな模様が描かれていますが、一つ一つに意味は込められているのですか?

ムラタさん:特にはっきりとした意味合いは込めていませんが、優しさを表現する丸であったり、少し尖った形もあったり。様々な感情があるように、色んな形を散りばめてみました。

星:明確な形ではないからこそ、子どもの想像を掻き立てそうな面白い模様ですね。

ムラタさん:そうですね。敢えてこちらから意味を提示せずに、子どもの中で正解があればいいかなと思っています。

星:着物を選ぶときや、着付けをするときに、お子さまに「何に見える?」と聞きながら楽しめそうですね。話のきっかけにもなりそうです。

ムラタさん:ぜひ楽しんでいただけたら嬉しいです。2種類のモチーフが少し似ているのもポイントになっていて。3歳、5歳、7歳の異年齢のお子さまが、どちらを選んでも統一感が出るように、敢えて似通ったデザインにしました。

星:兄弟で撮影されるご家族も毎年いらっしゃるので、写真の中でも統一感が出てすごくいいですね。

星:実はクッポグラフィーでは、ピンク色の着物というのは珍しくて。ピンクを好むお子さまが多い中で、スタジオや写真の雰囲気との相性を考えると難しい色でした。従来の着物に使われているようなピンクは、華やかすぎて浮いてしまう傾向もあって。一方で、淡い色だとスタジオの空間に溶け込んでしまいすぎたりも。

でも、ムラタさんのデザインのおかげで、ちょうどいいバランスのピンクの着物を取り入れることができました。所々の緑色が良いアクセントにもなって引き締まります。可愛らしすぎない落ち着きもある色なので、7歳の女の子にも気に入っていただけるのかなと思っています。

ーー特にこだわった部分はありますか。

ムラタさん:やっぱりこの手描き感はかなり大事にしていて。絵の具を使って描いたのですが、筆のタッチの“かすれ具合”であったり線の揺らぎであったり。手を動かして描いたからこそできるものは、敢えてそのままを大事に残して、それを生かしたカラーリングにしました。

ーーー生地になっても手書きの感じが伝わりますね。

星:手描きの良さは大事に残したいと思ったんですよね。温かみが増すので。

ムラタさん:そうなんですよね。私の作品の表現方法として、手仕事の温かさも伝えたいと思っていて。

ーー制作で苦労された部分はありますか?

ムラタさん:苦労はなかったのですが、実は一番最初のラフ案は子ども向けをかなり意識したデザインでした。可愛らしくすることに寄すぎたデザインだったこともあって、クッポグラフィーの皆さんから、私が大切にしているコンセプトのまま描いてほしいとフィードバックをいただいたんですよね。

星:せっかくコラボする機会に恵まれたので、ムラタさんらしいデザインをそのまま活かしたいと思っていたんです。改めて今の原画をいただいて、素晴らしいデザインに感動して。あまりに素敵なデザインだったので、着物の形にするために絵をカットすることに罪悪感が出てしまったりも。

ムラタさん:そうだったんですね。どこをカットしても大丈夫なように、余白も考えて描いたので心配しなくて大丈夫ですよ(笑)

星:それを聞いてちょっと安心しました。

ムラタさん:大学時代に絵画の勉強をしてきた経験もあって、1枚の絵を着ているような感覚になってくださると面白いかなと思ってデザインしました。模様と絵の中間のような。今回も、生地幅いっぱいになるように描いたので、どの部分が出ていてもいいように計算をして作っていますし、信頼してお任せしています。

星:よかった…。ありがとうございます。

(写真)小物は、主張しすぎないシンプルなもので生地との相性も考えて、星が素材を選んでいる。子どもが気になって撮影に集中できなくなるような小物は避ける工夫も。

■子どもが主役の七五三になるように、オリジナルの着物を作る理由

ムラタさん:生地がすごく軽いですね。まるで洋服のような。

星:そうなんです。お子さまが着物を嫌がる理由の一つに着物が重いからと感じています。せっかくその子のためにお祝いをするのに、本人が楽しめずに終わってしまうのはもったいないので。生地も、洋服感覚で着られるものにしました。あと、スタジオではほとんどの子が走り回ったりして遊ぶので、動きやすい素材の方が子どもたちも楽しめるのかなと思って。

ムラタさん:七五三の撮影で走り回っても大丈夫なんですね!私が子どもの頃の七五三では、家族みんなでかしこまってカメラの前で緊張して撮影をしていた思い出があるのですが、全然違いますね。

(写真)ユニークな福岡スタジオの空間では、お子さまが大喜びで遊ぶ様子も。

(写真)泣いてしまったり、着物を着られなかったとしても、ありのままの姿を写真に残すことを大切にしている。後から写真を見返したときに、その日の記憶が蘇ってもう一度楽しめると言ったお客さまの声も。

星:スタジオで滑り台のような遊び方をしたり、飛んだり跳ねたりする子もいるので、いくつかのサンプル生地をスタジオの床でこすって強度を確かめたりもしているんですよ。摩擦で生地が傷まないか、着物にスタジオの塗料がついてしまわないか、色んな角度で試していて。

ムラタさん:まるで実験ですね(笑)

星:はい(笑) 和装は手縫いのものが多いのですが、クッポグラフィーの着物はしっかりとミシンで縫製しているので思い切り動いてもらっても大丈夫です。

(写真)家族での集合写真の際には、すばやくヘアメイクアーティストが子どもの着物を直す。自由な撮影時間の中で、着物姿をきちんと残すことも徹底している。

ムラタさん:子どもが思い切り楽しめるのは、本当の意味で子どものための七五三になりそうですね。

星:そうなるといいですね。そのために、ダメと禁止するようなこともないですし、無理に笑ってと言ったりもしません。というか、遊んで楽しんでいる子どもって、自然と笑っているので言う必要がないんですよね。そんなお子さまの姿を見ていると、大人の緊張もとけていったりもして、いつの間にか家族全員で遊んでいるようなこともあります。

ムラタさん:小さい頃から自由な空間で写真を撮ってもらえる機会があると、大人になってからも写真に対する考え方も変わりそう。

星:撮影そのものが心に残ることで、あのときの記憶が蘇るような、その人にとって心の支えになるような写真が生まれると思っています。七五三の場合は、一つの空間でみんなでその子の成長をお祝いしたこの体験が思い出となるように。私たちはその瞬間を写真に収めるための撮影をしています。当日私はヘアメイクアーティストとして、スタジオで汗だくになって子どもたちと一緒に撮影を楽しみます。クッポグラフィーのお兄さんやお姉さんと遊んで楽しかったなという記憶にもなるといいなと思って全力投球です(笑)

ムラタさん:改めてお話をして、その子の人生の大切な1ページに自分の作品が少しでも関われるというのは、もう感無量ですね。

星:私たちも、ムラタさんデザインの着物を着た子どもたちがどんな気持ちになるのか、今からワクワクしています。

ムラタさん:この着物を身につけることで気持ちが明るくなったり、前向きな気持ちになってくれたら私も嬉しいですね。お気に入りを見つけてもらって、その日が楽しい思い出として残ってくれればいいなと心から思います。

取材・文 石垣藍子

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